「今の仕事は好きなので、これをずっと続けていきながら、いい人が見つかれば結婚をして、素敵な家庭を築けたらいいなぁと思ってます。仕事も、産休とか育休もしっかり取れるし、職場の先輩でも復帰してる人も多いし。あとは、結婚相手が見つかればいいんですけどね(照)」
…本気で言ってるのであろうか?
なぜ5年後も10年後も、自分が同じ仕事をできているとなぜ確信しているのだろうか。
AIが、ロボットが、優秀な外国人労働者が、今の自分の仕事をやることになるかもしれないとは思わないのだろうか?
最近、こんな女性に出会った。
彼女は、長女として生まれ、妹の面倒を一生懸命見ながら、懸命に生きてきた。気を気配りすぎる性格のせいか、周りには「お節介」「母親か」といじられながらも、友達も多く楽しく生きてきた。
学生時代には、アメフト部のマネージャーとして、そのお節介ぶりを遺憾無く発揮。気遣いができ、選手から好かれるとても愛されるマネージャーだった。
働く場所は、アパレル関係の商社の事務を選んだ。銀行の事務員も考えたが、「ただ流れてくる仕事をこなすだけ」の仕事はしたくないと思い、ある程度「もっとこうしたらいいんじゃないか」「こうした方が効率的だし、発注の仕方も機械的にやらずに、少しでもクライアントさんにとって良いタイミングできるようにしたい」などの提案ができるような、今の仕事を選んだという。
彼女の良いところは、そういった気配りや気遣いができるところ。時々、なんでも背負い込み過ぎてキャパオーバーになることもあるが、職場の人にも恵まれている。
彼女は言う。
「今の仕事は好きなので、これをずっと続けていきながら、いい人が見つかれば結婚をして、素敵な家庭を築けたらいいなぁと思ってます。仕事も、産休とか育休もしっかり取れるし、職場の先輩でも復帰してる人も多いし。あとは、結婚相手が見つかればいいんですけどね(照)」
彼女はあと足りないものは「生涯付き添えるパートナー」だけだと思っている。そうすれば、欲しいパズルのピースが揃うと思っている。
ちょっと立ち止まって世界を見渡して欲しい。
人間が行う仕事の約半分が機械に奪われる—そんな衝撃的な予測をするのは、英オックスフォード大学でAI(人工知能)などの研究を行うマイケル・A・オズボーン准教授である。
(中略)
オズボーン氏は言う。「最近の技術革新の中でも注目すべきはビッグデータです。これまで不可能だった莫大な量のデータをコンピューターが処理できるようになった結果、非ルーチン作業だと思われていた仕事をルーチン化することが可能になりつつあります」
(引用元)
クライアントにとって、最適なタイミングで、最適な量を発注する作業は、人間よりもビッグデータに基づいて計算をできる人工知能の方が精度が高い。もし、彼女の職場にそのロボットが導入されたら彼女の仕事はどうなるだろうか。
この事実だけとっても、彼女が「今の仕事をずっと続けていける」と思っていることは、あまりに楽観的であると言わざるを得ない。
また結婚して子供を産んだ時のことを考えると、産休と育休をへて職場復帰をした時に、今までやっていた自分の仕事がない、ということも十分に考えられる。
そうなると、旦那以外の収入はどこで担保するのだろうか?また未来の素敵な旦那さんの仕事は、どんな仕事であれば本当の意味で「安定している」と判断できるのだろうか。
時代は今、めまぐるしく動いている。
富士フィルムは、カメラの事業から化粧品に乗り出し、
ツタヤを手がけるCCCはサプリメントを売る時代だ。
もう「一社一事業」なんて時代はとっくに終わっているのに、どうして「一人が、一つの仕事」なんてことが維持できるのだろうか。
おそらくほとんどの人にとって(おそらく私にとっても)、「今の仕事は5年後にはない。」10年後にはどうなっているかさえ予想もつかない。
一つの仕事を極める人よりも、時代時代に合わせていろんな仕事にシフトしていける人の方が、結局は安定する時代になる。
おそらく彼女は、そういう意味で「安定している旦那さん」を選ぶことはできない。
なぜなら、彼女自身が変化を恐れているから。変化をしながら安定する旦那さんとはウマが合わない。
彼女は最後にこう言った。
「私、人前に出て自分の意見を言うのとかものすごく苦手なので、セミナーとかワークショップとかって絶対に行けないです。そういうのって、しっかり考えなきゃとは思うんですけどね。」
思っているだけ、では何も変わらないのに。