優秀なフリーランスに選ばれる会社と選ばれない会社の違い

優秀なフリーランスに選ばれる会社と選ばれない会社の違い

「強い個人」を活かせる企業が勝ち残る時代に

平成281117日、経産省が「雇用関係によらない働き方」に関する研究会を開きました。その資料(*1)によれば、「アメリカの労働力人口の1億5,700万人のうちの35%、約5,500万人がフリーランスとして仕事を受けて」いるそうです。

日本はまだまだ労働人口の3.6%ほどしかいないようですが、日本の企業でも「副業禁止を禁止」しているサイボウズ、先日副業を解禁した(*2)ロート製薬などの大手企業も、副業を認め始めており、副業的フリーランス・専業フリーランスの数は、今後増えていくであろうと予想されています。

またオープンイノベーションという言葉に代表されるように、社外の技術やノウハウを集結させて、いくつもの企業やフリーのスペシャリストと協業し、全く新しいイノベーションを起こそうと試みる企業が増えてきています。

そんな時代にあって、企業に求められるのは「強い個人」の活用です。既に企業や国家の枠にとらわれずにボーダレスに活躍する個人が、時代の世論すら動かすほどの力を持つようになってきており、今後もそれは一層加速していくでしょう。

いかに優秀な個人(や小さい組織)をまとめ上げプロジェクトを回していくか、というファシリテートの能力の不足は、自社に利益をもたらす人材を取りこぼすことに直結してしまうのです。

では、そんな「強い個人」である人たちが、逆にどんな企業とだったら協業したいか、あるいはしたくないと思っているのか。そのリアルをご紹介していきたいと思います。

フリーランスに嫌われる会社

フリーランスに嫌われる会社というのは、一言で言うと、正当な報酬を払わない会社、と言えるでしょう。特に専業で仕事が取れるほどの「強い個人」であるフリーランスの人たちは、サラリーマンでのパフォーマンスでもらえる収入に限界を感じて、企業されている方もいます。

せっかくリスクを背負って独立を志したのに、その成果に対して本来もらえるはずの正当な報酬がもらえないというのは、何のためにフリーランスをやっているのか意味がわからなくなってしまいます。

そして、その正当な報酬を支払わないというのは、その人のことを「なめている」というマインドが反映されている結果だと認識します。この「なめてるな」と感じる感情になった瞬間に優秀な人たちは、その企業への信頼が一気にゼロになるのです。

選ばれるための営業であり、同時に選ぶための営業である

私たちフリーランスが営業をかける時は、もちろん仕事が欲しくて求人情報を探すわけですが、「どこに雇ってもらえるか?」という考え方ではなく、「どの企業だったら自分のスキルを活かすのにふさわしいか」「良いパートナーシップを築けるか」という考え方で臨んでいます。

例えば、ある企業の求人に応募する際には、その会社のビジョンや社長のインタビュー、そこで働いている社員の様子、過去の実績などのありとあらゆる情報を調べられるだけ調べます。そしてそれにふさわしい自分の実績を用意してから、面談に臨もうとします。

だからこそ面談の時に、企業側がこちらの過去の実績などを一切調べることせずに、例えば職務経歴書を読めば書いてあるようなことを質問されると、「あ、この会社はこの先パートナーシップを組むかもしれない相手に、全く興味を持とうとしていないんだな」と思ってしまうのです。

つまり、選ばれる立場であると同時に、選んでいる立場にいるのです。お互いがお互いに「選び、選ばれる」感覚を持っていない会社とは、仮に採用されたとしてもこちらから断ることもあるでしょう。

報酬、に企業のあり方が全部出る

当たり前のことすぎて書くのも憚れることですが、契約書を交わさないうちに仕事の発注をしてこようとする企業の報告が後を絶ちません。また契約書を書いても、代金の未払いや滞りは割とよく起こる問題です。

そのためフリーランスは常に「きちんとお金が払われるか」の対策を考えています。契約書の締結を先延ばしにするような企業には、絶対に自分の作品や知識を供給したいと思わないですし、一度作品を収めたとしても二度のその会社とは関わらないようにしています。

またサラリーマンの人にとっては仕事のパフォーマンスが高くても低くても、もらえる給料が一緒ということもあると思いますが、フリーランスは違います。あまりに安い単価を設定されると「自分のパフォーマンスは安く買えると思われている」と感じます。

お金の話になった時に、うやむやにしようと話をはぐらかす会社は、イコール自分の仕事への評価もうやむやに誤魔化すに違いないと判断しています。

言ってることとやってることが違う

仕事を受注する際に一番困るのは、具体的に何をどのようにしたいのかの明確な指示がない会社です。明確になっていないならなっていないで「明確にしたい」と言ってくれればいいのですが、「イメージはこんな感じで」と丸投げされると非常に厄介です。

私たちフリーランスは「時間」を切り売りしている働き方を選択しているので、「収入に結びつかない労働時間」を最も嫌います。

例えばホームページ作成を仕事にされている場合、「デザインを考える」作業と「デザインを形にする」作業は全く異なるものであり、デザインを形にするのはコーディング(プログラミング)の仕事ですが、「デザインを考える」のはコンサルティングの仕事です。

もうすでにデザインが出来上がっているサイトを作るのと、デザインを一から考えて作るのは、かかる工数が全く違うため別々にお金がかかるという認識です。ところが企業側が「デザインを形にする」ために契約を結んでいたのに、コーディング料金の範囲内でデザインの修正を依頼してくることがよくあります。

あとだしで色々と指示を変更して、報酬は変えずに仕事の範囲を広げようとしてくる会社、こういう会社も嫌われる代表例です。

フリーランスに選ばれる会社

ではフリーランスに好かれる会社とはどのような会社か。結論から言うと、嫌われるようなことしない=好かれる、ではありません。嫌われるようなことしない=仕事を協業する上での最低限のマナーであり、それだけで高評価になることはありません。

メッセージのレスが早くて正確

最近ではビジネスチャットアプリなどを使って仕事のやり取りすることも多くなってきています。そこでのやり取りは、企業側からすると些細であるように思えるかもしれませんが、フリーランスにとってはそこでのやり取りが全てですから、担当者さんたちがそのやりとり以外の時間に何をしているのかは私たちには見えていません。

ですから、例えばこちらが提出したもの(仕様書・記事・デザイン案)に対して、「確認します」とだけ返信して、そのまま何日もレスがないととても不安になります。なぜなら、複数案件を抱えている人にとっては、そのレスが1日遅れるだけで、その1日でできたはずの仕事ができなくなり、他の仕事の納品に支障をきたしてしまうのです。

そうではなく、「確認し、いついつまでに回答します」という期限を設けてくれる会社はとても仕事がしやすいです。「いつまでに何をどのように」をフリーランスに指示するだけでなく、自分たちの作業の分も明確にしてくれる担当者さんのことは大好きになります。

会社のビジョンが社員に浸透している

フリーランスがパートナーとしてふさわしい企業かどうかを見極めるポイントの一つに「企業文化」があります。事前の下調べや面接の時に知ったその企業のミッションが、どれだけ社員の仕事の進め方に活かされているか、そこを判断しています。

社員の言動ひとつひとつに、その会社の理念が浸透しているか否かは、一度仕事をしてしまえば全部バレてしまいます。フリーランスがどんなにプロフィールを着飾っていても、実際に仕事をすればその実力がばれてしまうのと同じです。

それだけデカデカと「お客様のために」と書かれていても、そのミッション通りに動いている会社はほとんどありません。そんな中で、そのミッションの通りに仕事を進めようとしている社員さんとやり取りできると、その企業への信頼感が格段と増します。

一個人としての関わりを受け入れてくれる

フリーランスは孤独な生き物です。もちろん横のネットワーキングはありますが、やはりクライアントさんとは仲良く気持ちよく仕事を進めたいという思いがあります。人間関係はチャット上だけでは100%作られませんので、できれば直接会ってコミュニケーションを図りたいと感じているフリーランスは意外と多いのです。

気軽に飲みにも誘って欲しいですし、雑談も(忙しくなければ)ウェルカムです。仕事の出来不出来をきちんと評価してくれるのが前提ですが、それ以上に一個人の思いや仕事へのスタンスを理解しようと努めてくれる会社には、多少の無理をしてでも貢献したいと思うものです。

まとめ

いろいろ書いてきましたが、要点をまとめると、

・仕事に対する対価をきちんと支払う
・対応や指示出しが的確で早い
・個人としてのフリーランスを尊重し、評価する

会社は、優秀な人材が積極的にその力をいかんなく発揮してくれます。逆にこれと反対のことをやると優秀な人材はどんどん逃げていきます。私たちは評価されている立場にあるのと同時に、一緒に仕事をする会社のことを評価しているのです。

これを読んだ会社の皆さんと良きパートナシップを築き、一緒により良い仕事を進めていけるフリーランスが増えることを切に願っています。

参考文献:

*1http://www.meti.go.jp/press/2016/11/20161117005/20161117005-1.pdf

*2http://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ24I66_U6A220C1TJC000/

川口 美樹

俳優業からの独立。現在は執筆・企業研修・ワインのインポート・300人規模のイベント運営などいくつか個人でやっています。子育てする時間も欲しいので、株式投資や不動産の分野も勉強中です。気軽にフォローしてくださいね。